リマスター盤とは何??
70年代や80年代のロック、ポップのCDは、何度もリマスター盤が発売されています。「音質がよくなっているのでは? 買わないと損するのでは?」という気持ちになり、その都度、買い換えてしまいます。
でも、リマスターとはいったい何でしょう? まとめてみました。
1. アナログ音源をデジタル変換
70年代の音源はアナログ録音されています。一方、CDはデジタル信号になっています。また、スピーカーから出てくる音はアナログです。
すなわち、「アナログ録音の音をアナログで聴く」レコードと異なり、CDは「アナログをデジタルに変換して記録し、再生の際にデジタルをアナログに変換する」ので、信号が変化します。
アナログ信号のデジタルへの変換手順は、簡単に言えば以下のようになります。
1) 時間を細かく区切る。この細かさをサンプリング周波数と言います。kHzという単位(1kHzは、1秒間を1,000に区切る意味)で表します。
信 号 の 強 さ |
|||
時間 |
時間 |
2)
時間の区切りごとに、信号の強さを「段階的な値」で示す。bit数がこの段階を示しています。
ちなみに16bitとは「2の16乗=65,536」段階、24bitは「2の24乗=16,777,216」段階になります。
信 号 の 強 さ |
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時間 |
時間 |
2. デジタル変換と音質の関係
CDプレーヤーでは、上記とは逆に「デジタル信号をアナログ信号」に戻す作業をします。
上の図から想像つくように、「時間を細かく区切る=サンプリング周波数を上げる」ほど、「信号の段階を増やす=bit数を増やす」ほど、階段が細かくなってアナログ信号に近いデジタル信号が記録されるため、アナログに戻した際に、もともとの信号に近いものが再現できます。
CDは、サンプリング周波数が44.1kHz、bit数は16bitと決まっています。CDに記録可能なデータの制限上、これ以上細かくすることは不可能です(これを解決したのがDVDオーディオ。詳しくは後で)。
3. デジタルリマスターとは何か
簡単に言えば、「アナログ・マスターテープからのデジタル変換を、最新の機器を用いてやりなおす」ことです。CDが出始めの頃と今では機器の性能に雲泥の差があります。また、その際に音量を上げたり、イコライザーで音質を調整したり、ノイズを除去したりします。リマスター盤で音質がよくなったように感じるのはそのせいです。
さて、前述のようにCDの制限上、デジタル変換は「44.1kHz、16bit」でやれば十分なはずです。しかし、今は「24bitデジタルリマスター」が大流行です。これは「マスターテープからのデジタル変換は、24bitという細かいレベルでやり、その後、16bitに落としてCD原盤をつくる」という技術です。どうやって24bitから16bitにするかは、各レコード会社の腕の見せ所のようです。
一方、TOTOやビリー・ジョエルなどソニー・ミュージックのアーティストでは、DSDマスタリングという手法を用いてデジタル変換を行っています。これは、サンプリング周波数が2822.4kHz、1bitでの変換とのことなのですが、何故、1bitで事足りるのか理屈はわかりません・・・。
4. リマスター盤は音質がよいのか?
少なくとも90年代後半に出たリマスター盤は、それ以前のものに比べ音質がよくなっています。
特にクイーンのCDは、リマスターを重ねる度に「もやもや感」が消えて、音がクッキリしています。1991年デジタルリマスターでも以前のより改善していましたが、2001年24bitデジタルリマスターでは、ベースの音がずしんと重たくなりました。
TOTOのDSDリマスターも、以前のCDとは比べ物にならないくらい、スッキリ&パワフルになりました。ビリー・ジョエルは1998年24bitリマスターと2004年DSDリマスターは違いがよくわかりませんでした。頂上決戦ですからね・・・。
一方、リマスターしたからと言って音がよくなるというものでもありません。最近は、迫力を出すために音量を上げてCDに記録するのが流行っています(「音圧を上げる」とも言う)。CDには「記録できる最大の音量」がありますので、あまりにも音量をあげてCDに記録してしまうと「もともと大きな音」がカットされてしまい、ダイナミックレンジ(大きな音と小さな音の音量の差)が狭まりメリハリがなくなってしまいます。
また、音をクリアに聴かせるために、イコライザーで高音を強調することもあります。強調しすぎてキンキンして聴きづらくなったリマスターCDもあります。
以前、私は「リマスターなら音質が改善しているはずだ。買い換えよう!」と飛びついていましたが、最近は「リマスターにも当たりはずれがある」と思い、買い替えには慎重になっています。
5. さらに音質を求めて
DVDには、CDより遥かに大量のデータを収録することができます。DVDオーディオの規格では以下のようなデータを入れることができると定められています。サンプリング周波数とbit数の組み合わせは自由です。
たとえば、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」のDVDオーディオでは、2chでは「192.1kHz、24bit」、5.1chでは「96kHz、24bit」となっています。
サンプリング周波数 | 44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、192.1kHzのいずれか |
bit数 | 16bit、20bit、24bitのいずれか |
一方、前述のDSDマスタリングしたデータを、DSDデータのまま収録したものがSACDです。
DVDオーディオとSACDの音は、明らかにCDと違い、愕然とします。
音質を追求されたい方は、是非ともSACD/DVDオーディオプレーヤーを買って、聴いてください。