アダム・スコットは死亡した父の財産分与の席で、父親が遺した封筒を受け取った。その中には元ナチス・ドイツの高官が、スコットの父親にロシア皇帝のイコンを贈与する旨の手紙が入っていた。そのイコンに高額の価値があることを知ったスコットは、イコンを受け取るために保管場所のスイス・ジュネーヴへと向かう。

一方、ロシア皇帝のイコンの中に、ソ連が1867年にアメリカに売却したアラスカを買戻しできるという条約書が隠されていることを知ったソ連書記長は、KGB工作員のロマノフをジュネーヴに送り込む。ロマノフはイコンが保管されている銀行を探し当て、偽名を使ってイコンを手に入れようとするが、スコットが一歩先にそのイコンを手にいれ、そのことを知ったロマノフは、イコンを強奪しようとスコットを追跡する。

謎の追跡者の存在に気づいたスコットは、自分が追われる理由がわからぬまま、スイスからフランスに逃げ、一路ドーヴァー海峡への道を進む。一方、イコンの中に条約書が隠されている事を知ったアメリカも、ロマノフより先に条約書を手に入れるためCIA工作員をフランスに送り、スコットの追跡を始める。

やがて、スコットはイコンの中に条約書が隠されていることに気づき、何故、自分が追跡されているかを知る。彼はさまざまな危機を乗り切りパリにまでたどり着くが、ルーヴル美術館にイコンを隠した直後に、ロマノフにつかまる。ロマノフはスコットに拷問を加え、また、イコンと引き換えに彼の父親の名誉を回復するための判決文を渡す旨の取引を申し出るが、スコットはそれに応じず、隙をみて自力で脱出し、イコンを回収する。

彼はロマノフやCIAの執拗な追跡を振り切り、ロンドンに帰り着く。そこで彼はロマノフに復讐を果たし、彼から判決文を奪い取るための作戦を実行する。





●イコン「聖ジョージの竜退治」

イコンは絵の一種です。「聖ジョージの竜退治」は、いろいろな作家が作品を作っています。残念ながら、小説に登場するリュブリョフ作のものは見当たりませんでしたが(アーチャーの想像のものかも・・・)、他の作家の作品をいくつか紹介します。

14世紀の作品
15世紀の作品
16世紀の作品

●スコットが辿ったルート

イコンを追いかけるロマノフから逃げ切るために、スコットはスイスからイギリスまでの決死の逃避行を繰り広げます。その軌跡を一覧にしました。

A: ジュネーヴ
イコンを入手。

B: ゾロトゥルン
RPOのバスを降りる。

C: ディジョン
ハードカースルの車を降り、飛行機で飛び立つが、不時着。

D: ブルゴーニュ運河の近く
車を盗み、パリへ。

E: パリ
車を借り、ブーローニュへ。

F: アブヴィル
この街の近くのトンネルで、自転車レースの伴走車に乗り換え。

G: ブーローニュ
ここでフェリーに乗るつもりだったが、ダンケルクへ。

H:ダンケルク
RPOのバスでイギリスへ。

I: ドーヴァー
救急車に乗り、フェリーを降りる。

J: ロンドン

ルーヴル美術館
スコットはここにイコンを隠し、ロマノフの目を欺きました。


●実在の人物

小説には実在の人物が登場し、リアリティーを高めています。

ヘルマン・ゲーリング

ソ連 ブレジネフ書記長

アメリカ ジョンソン大統領