Caravan

Caravan

パイ・ヘイスティングス(G, Vo)、リチャード・コフラン(Dr)、リチャード・シンクレア(B, Vo)、デイヴ・シンクレア(Key)で結成。

古臭いサイケデリック・ロックです。たまに、全盛期をうかがわせるオルガンソロが入ります。

キャラヴァンの信者になって、「どのようなサウンドでも受け入れる」という心境になってから買いましょう。

If I Could Do It All Over Again, I'd Do It All Over You

デイヴが弾く歪んだオルガンのサウンドが鳴り響き、よく動くベースラインと絡み合うというところが心地よい作品。その一方、歌メロはないに等しく、存在感がないです。

ボーカルはどっちかというとリチャードSよりもパイが目立ち、もわっとした彼の声質のために曲がソフトな感じを受けます。

まず「グレイとピンクの地」を聴いてみて、そのサウンドが好みだと思ったら聴いてみましょう。


(プラチナSHM)


(SHM-SACD)


(2CD+DVD)

In the Land of Grey and Pink

1曲目のGolf Girlを始め、前半はほのぼのとしたボーカル曲が続きます。「プログレの名盤」、「ジャズ・ロック」として雑誌に紹介されていたので、聴く前は「テクニックの応酬が展開されている」と予想していただけに拍子抜けします。
しかし、聴いていくうちにそのほのぼのさと歪んだオルガンの音が心地よくなっていきます。

ラストの20分曲9 Feet Undergroundは、歪んだオルガンが鳴りまくる組曲です。これをジャズ・ロックと表現するのだな、と納得。

はっきりとした声質のリチャードSがボーカルをとる曲がほとんどなので、前作よりも生き生きとしている感じがします。

40周年記念盤として、ボーナスCDとスティーブン・ウィルソンによるリミックス(ステレオ、5.1ch)を収録したDVDとのセットが発売されています。スティーヴンはハイレゾでミックスしたのに、レコード会社がケチったために5.1chはドルビー・サラウンドで収録されています。

Waterloo Lily

デイヴが新たな道を歩むために旧友のロバート・ワイアットとマッチング・モウルを結成するために脱退。後任にスティーヴ・ミラーが参加。

オルガンサウンドは影を薄め、その代わりに華麗なエレピが前面に出てきました。リチャードSの自由奔放なベースラインと相まって、極上のジャズ・ロックが展開されています。2つの10分超え作品のかっこよさにはしびれます。特にThe Love In Your Eyesの起伏に飛んだ展開と、ホーンセクションをバックにした激しいフルートのソロにはほれぼれします。

ツアーの終了後、ジャズ路線を主張するリチャード&スティーヴと従来路線を主張する他のメンバーとの意見対立の末、リチャードSとスティーヴが脱退してハットフィールド・アンド・ザ・ノースを結成。


(プラチナSHM)


(SHM-SACD)

For Girls Who Grow Plump in the Night

パイの声掛けに応じ、キーボードにはデイヴが復活。ベースにジョン・G・ペリーが加入。ジャズっぽさが薄れてロック色が強くなるとともに、ビオラ奏者のジェフリー・リチャードソンの加入やオーケストラ導入でシンフォニックさがアップ。

ビオラの音にはっとさせられることしばしば。シンフォニックなサウンドが好みの私には、しっくりくるサウンドが展開されています。

Caravan and the New Symphonia

1973年10月のイギリス公演を収録。前半はバンドのみで「夜ごと」から3曲演奏し、後半はオーケストラ&女性コーラス入りで演奏。

後半には過去の作品から10分超えの曲3つと新曲が3つ演奏されています。オーケストラの厚みと女性コーラスの華やかさが曲に趣を与えています。

でも、「厚化粧」という感じがして、初心者にはまずは「すっぴん」サウンドを聴いてもらいたいです。

Live at the Fairfield Halls

1974年9月のイギリス公演を収録。「夜ごと」の曲をメインに、バンドのみの「すっぴん」演奏。

ジョンに代わって新加入したばかりのベーシスト、マイク・ウェッジウッドがやる気マンマンのプレイを奏でています。ジェフリーの自由奔放なヴィオラ演奏に思わず口元がほころびます。The Love In Your Eyesのオルガン&ビオラ用のアレンジは、オリジナルとは違った趣があってよいです。

ドラムの音がパワフルに収録されていて、「キャラヴァンのサウンドは柔らかい」という印象をくつがえらされる、興奮度満点の演奏が披露されています。

Live at the Record Plant 1974

1974年11月4日にカリフォルニアのラジオ局スタジオで放送用にレコーディングしたライヴを収録。

Cunning Stunts

前半は爽やかなポップな曲が続きます。ありきたりの曲のような感じがして、「夜ごと」のプログレ的展開を期待して聴いていると、肩すかしをくらいます。

後半のThe Dabsong Conshirtoeは、起伏に飛んだ18分組曲で、前半の欲求不満を解消してくれます。フルートやシンセサイザーのからみが心地よいです。

Live In London 1975

1975年3月21日に行われたBBCラジオ放送のためのコンサートを収録。

「ロッキン・コンチェルト」をフル収録。

この後、デイヴが新バンド結成のために再び脱退。

Blind Dog at St. Dunstans

キーボードにヤン・シェルハースが加入。

「長めの曲には、ファンが飽きてきているのでは?」と思ったパイが、短め曲メインにする新方針を提唱。そのためプログレさはなく、ポップな曲が多数収録されています。とは言え、これまでのプログレ・アルバムに収録されていたポップな曲と同じ雰囲気があり、そんなに違和感はありません。

3〜6曲目は切れ目なくつながり、10分超の組曲として曲調の変化を楽しめます。

1976年末にマイクが脱退し、後任ベーシストにデク・メッセカーが加入。

Better by Far

パンク・ムーヴメントが隆盛しているなか、何かの変化が必要だと思って、サードアルバムから長年プロデュースを担当したデヴィッド・ヒッチコックと別れ、トニー・ヴィスコンティをプロデューサーに迎えてレコーディング。

その影響は大きく、これまでのサウンドと異なる垢ぬけたパワーを感じるポップ曲が収録されています。ソウルフルなゲスト女性ボーカリストを起用した曲には意外性あり。

1978年にリチャードSが復帰して、新曲のデモをレコーディングするもののアルバム発売をレコード会社が却下して音源はお蔵入り(のちに「クール・ウォーター」に収録)。

1979年にはデイヴも復帰し(ヤンが脱退)、新アルバム作成やライヴ盤作成の話があがったものの成就せず。リチャードSが他のプロジェクトのために再度脱退してデクが復帰。

The Album

短めポップ曲を収録。パイだけでなく、デイヴやジェフリーが書いた曲も収録され、ジェフリーやデクがリードボーカルの曲があり、これまでにない多彩さを感じます。ジェフリーのレゲエ曲には驚き。

異色作で「これがキャラヴァンのアルバムなのか?」と思ってしまいます。それをわかったうえで聴けば、ポップアルバムとしては楽しめます。

ツアーの終了後、デクとジェフリーが脱退し、リチャードSが復帰。

Back to Front

オリジナル・メンバーに戻って作成した作品。

前半はリチャードSメイン。彼の声とベースラインを聴くと、「グレイとピンク」のA面を聴いた時のようなほっこりとした気持ちになります。きらびやかなデイヴのキーボードプレイにはジャズロックさも感じられます。

ゲスト参加のメル・コリンズが吹くサックスもナイス。

後半はデイヴがエレピ弾き語り風に歌う、ほんわか曲でスタートし、パイのボーカル曲が続きます。ラストの8分曲はギターソロ、キーボードソロ、サックスソロが入る起伏のある展開がプログレ的で、「このサウンドが聴きたかった」と溜飲が下がります。

発売後、デイヴが安定した収入を得るために中古ピアノ屋を始めることになり脱退。

ヤンとジェフリーが復帰して1984年までライヴ活動した後、解散。

Cool Water

1990年にテレビ番組出演のためにオリジナル・メンバーで再起動し、勢いでツアーも実施。ツアー終了後にリチャードSが脱退。

1994年あたりに、キャラヴァン・ファンのレコード会社スタッフから「うちで発売できそうな音源ってある?」と尋ねられたパイが、「ベター・バイ・ファー」の後にレコーディングしたデモ7曲のことを話したことで、曲に手を加えて仕上げたうえで発売決定。パイが参加した他のセッションでの4曲も加えてあります。

プログレさは全くなし。良質のポップ&ロック曲が収録されていて、パイの声に癒されます。

The Battle of Hastings

1995年に入って、パイ、リチャードC、デイヴ、ジェフリーと新ベーシストのジム・レヴァートンで再起動。

プログレさは全くなし。心安らぐポップ&ロック作品としては完成度は高いです。

ジェフリーが奏でるバイオリンやビオラ、ゲストのジミー・ヘイスティングスが吹くフルートやサックスがいい味付けになっています。

All Over You

過去の作品を再レコーディングしたもの。主にアコースティックアレンジになっています。

1996年終盤のツアーからギタリストにダグ・ボイルが加入。

All Over You Too(2000年)

過去の作品を再レコーディングしたもの。主にアコースティックアレンジになっています。

The Unauthorized Breakfast Item

2002年に新アルバムの曲作りの途中でデイヴが脱退し、ヤンが復帰。

若手ギタリスト(当時41歳)のダグとのツインリード体制になったことで、ぐっとロック色が強まって元気さを感じます。

終盤は雰囲気が一転します。アコギをバックにジェフリーのビオラがむせび泣く哀愁のインスト曲に続けて、デイヴが作曲&キーボードを弾いた9分曲へ。キーボード、ギターのかけあいが聴きどころで、若干プログレ風味があります。そのままジミーが吹くフルートが心地よいインスト曲が流れて、余韻たっぷりに終了。

Paradise Filter(2013年)

2005年にリチャードCが関節リウマチのためにコンサートでドラムが叩けなくなったことから、2010年にドラマーとしてマーク・ウォーカーが加入。リチャードCは肺炎のために2013年12月1日に死去。

歳のせいかパイは低めの声で歌っていて、以前のはかない感じがなくなっていて、違和感あり。耳障りが悪いです。

Who Do You Think We Are?: The Ultimate Tribute to The Ultimate Canterbury Band

全スタジオ+ライヴアルバム、発掘ライヴCDなどをまとめた35CD+DVD+Blu-rayのセット。

Blu-rayにはスティーヴン・ウィルソンが手掛けた「グレイとピンクの地」のハイレゾ5.1chを収録。

It's None Of Your Business(2021年)

1曲目はジェフリーのバイオリンが心地よいメロディーを奏でて幕開けし、これまた心地よいギターソロで締める軽快な曲。

その後も高齢集団とは思えないパワフルなポップ&ロックが収録されています。

ジムが脱退したので、ゲストとしてリー・ポメロイがベースを弾いています。







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