T(1977年) Peter Gabriel 通称"Car" ジェネシスを脱退し、独自の世界を探求するために、ダーク調、ポップ調、ブルース調、オーケストラを導入したヘビーな曲など、万華鏡のような世界が展開されています。 全盛期のような民族音楽を取り入れたサウンドはなく、目新しさはありませんが、聴きやすい作品です。 絶対に成功させるという意気込みのもと、いろんなプロデューサーと面談した末に、大御所のボブ・エズリンにプロデュースを依頼。のちにピーターの盟友となったトニー・レヴィンを始め、ミュージシャンはボブが手配。セッションミュージシャンとの演奏が初めてのピーターは最初ビビったそうです。 「イギリス人も加えたい」というピーターの希望で、キング・クリムゾン休業中のロバート・フリップが参加。 |
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ライヴ・イン・オハイオ 1977 Live '77 1977年3月15日のアメリカ、クリーブランド公演を収録。 ラジオ番組キング・ビスケット・フラワー・アワーのために収録されたもので、音質はとてもクリアで良好です。スタジオアルバムに未収録の曲も演奏していてお宝感があります。 ロバート・フリップがダスティ・ローズという変名を使ってギタリストとして参加。 |
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U(1978年) Peter Gabriel 通称"Scratch" ロバートをプロデューサーに迎えた作品。前作に参加してもらったのに、ボブが彼をセッションミュージシャン扱いして彼らしさを発揮できなかったことを、ピーターは申し訳なく思っていたそうです。 ロバートを始め、前作に参加したトニー、ラリー・ファスト(key)、トニーが紹介したジェリー・マロッタ(Dr)で和気あいあいとした雰囲気でレコーディングを開始。 前作の明るいイメージから一転して、ダークな感じになっています。出来がイマイチな曲もあり、アルバム全体として散漫な感じで、特に盛り上がる箇所がありません。 |
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ライヴ・イン・ジャーマニー Germany 1978 1978年9月15日にドイツの音楽番組のために行ったライヴを収録。 |
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ライヴ・イン・ニューヨーク 1978 キング・ビスケット・フラワー・アワー Live In New York '78 King Biscuit Flower Hour 1978年10月4日のニューヨーク公演を収録。ラジオ番組キング・ビスケット・フラワー・アワーでの放送用に収録されたもの。 CD1にはEarly show、CD2にはLate showを収録。若干の違いはありますが、ほぼ収録曲は同じでIIの曲がメインです。 アンコールではロバートが登場してギターを弾いています。 CD2は公式ライヴ音源並みの音質で、スタジオアルバムよりロックで生の勢いがある曲を楽しめます。一方、CD1は序盤の曲がモノラルみたいに音に広がりがなく、音が揺れたり急にレベルが下がったりと状態が悪いですが、中盤から徐々に音がよくなってきます。 |
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V(1980年) Peter Gabriel 通称"Melt" 新しいサウンドを追求するために若手でユニークな才能を探した末、XTCのドラムス・アンド・ワイアーズでおもろいリズムセクションを生み出したプロデューサーのスティーヴ・リリーホワイトとエンジニアのヒュー・パジャムに目をつけました。 メロディーよりも先にリズムから曲作りしたそうで、アフリカ的なリズムを取り入れ、ピーターならではのスタイルを確立しました。民族音楽という要素が加わって、世界観が一気に広がり、ギターやベースの音の刻み方も独特になりました。 一曲目のイントロのドラム(フィル・コリンズが叩いた)の音だけで、「他の誰でもない、ピーターだけが醸し出せるサウンド」を実感できます。エフェクターのリバーブとノイズゲートを組み合わせたゲートリバーブがかけられたスネアドラムの独特の音は、多くのドラマーに衝撃を与え、1980年代に流行しました(その後、ヒューはジェネシスに迎えられ、アバカブをプロデュース)。 ケイト・ブッシュがゲストボーカルとして参加した2曲もあり、華を添えています。 ピーター入門として最適。 |
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Ein deutsches Album Vのドイツ語版。 多くのミュージシャンが非英語圏に行っても観客と英語でコミュニケーションしている姿に疑問を感じ、「リスナーに理解してもらう」ことを目指して各国のレコード会社に「あなたの国の言語でレコードを出す」と言ったら、ドイツだけが応じたそうです。詳しくはこちら(英語)。1994年の来日公演で彼は日本語でMCをやっていました。こんな信念をずっと前から持っていたとは知りませんでした。 ピーターのサイトによると演奏にも手を加えているみたいなのですが、いくつかの曲でエンディングが若干変わっているくらいで、そんなに違いはわかりません。 No Self Controlでケイトが歌っている箇所にはピーターのドイツ語歌詞が被り、よく聞き取れませんがケイトのボーカルは英語のままみたい。Games Without Frontiersのケイトのパートはもともとのフランス語がそのまま使われています。 英語歌詞に慣れた耳には違和感たっぷりで、1回試しに聴けば十分という感じ。 |
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W(1982年) Peter Gabriel 通称"Security" さらに民族音楽的なリズム志向が強まった作品です。前作のような派手さはなく、おどろおどろしい不気味さを感じる曲が並んでいます。 冒頭のピーターの叫びから始まる曲から異次元空間に叩き込まれ、2曲目で深みにはまります。 アクが強すぎて、ピーター初心者には向かないので、まずは小手調べに「3」を聴いてからの方がよいでしょう。 ジャケットに映っている謎の物体は、ピーターの顔です。詳しくはこちら。 |
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Deutsches Album Wのドイツ語版。 アルバムが持つ怪しげな雰囲気とドイツ語がピッタリとマッチしています。曲順が変更され、2曲目にFishing Netが入り、Rhythmとの波状効果で怪しげ感アップ。 演奏はリミックスされ、オリジナルと異なっています。 |
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プレイズ・ライヴ(1983年) Plays live 1982年11〜12月のアメリカでの4公演からの音源を収録。 3,4の収録曲を主体にした初期ピーターのベスト選集とも言える内容です。選曲、演奏、音質ともによく完成度の高い作品です。スタジオ録音に比べ、洗練され、パワフルさに満ちています。 メンツは、ファーストやセカンドからの盟友トニー、ラリー、ジェリーとサードからつきあいがあるデヴィッド・ローズ(G)。和気あいあいでバンドメンバーが楽しんで演奏している姿が目に浮かびます。 もともとLP2枚組(16曲)で発売されましたが、CD発売の際に4曲減らしたハイライト盤も発売されました。2007年に再発された日本盤はオリジナルとおり、輸入盤はハイライト盤。買うときは曲数を確認しましょう。 |
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バーディー(1984年) Birdy アラン・パーカー監督の映画バーディのサントラ盤です。全曲インスト。 アランが試しにピーターのアルバム収録曲を映像に当てはめてみたら、パーカッシブな曲が結構イイ感じだったので、正式に彼に頼んでサントラ曲を作ってもらうことになりました。当時、ピーターはSo用の曲作りで忙しかったのですが、以前から映画音楽を手掛けたかったので喜んで受け入れたそうです。 あまりにも時間がなかったために、新作だけでなく、過去曲の24トラックマスターテープからリミックスして作った曲も使用。 これぞと言った曲はないです。信者になった後、「彼の曲をすべて聴くのが使命である」と思ったら買うくらい。 |
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【25周年記念盤】 |
So(1986年) So シングルカットされたSledgehammerやBig Timeが世界的大ヒットし、ピーターの存在が「ポップ・アーティスト」として知られた作品です。 1982年7月に彼が主催でやった民族音楽フェスティバルWOMADで客が入らず多額の借金を背負ってしまい、どうにかして売れるアルバムを作る必要があったとのこと。ちなみに彼の借金返済支援のため、1982年10月2日にジェネシス再結成コンサートが開催されました。 ケイト・ブッシュとデュエットした、心が洗われるような上品さを持ったバラード曲は聴きごたえ満点。ローリー・アンダーソンやユッスー・ンドゥールをゲストボーカルに迎えた曲もあり。 完成度は高いですが、民族音楽的趣向が薄まっており、「3」,「4」と比べるとおもしろさに欠ける気がします。 2012年9月に25周年記念盤がリリース。LPレコードや当時のライブ映像を収録したDVDをセットにしたボックスセットもあり(くわしくはこちら)。 |
ライヴ・イン・アテネ 1987 Live in Athens 1987 & Play 1987年10月5〜9日のアテネの屋外円形劇場での公演を収録。 Soが大ヒットした勢いをかった、自信と熱気にあふれたライブが収録されています。当時、映画「最後の誘惑」の制作でコラボしていた名匠マーティン・スコセッシが総合プロデュースしただけあって、素晴らしいステージワークがしっかりと収録されています。 Soの曲のみならず、3や4に収録されたオイシイ曲がたんまりと収録されていて、聴きごたえ&見ごたえがあります。 のちのステージで登場する大道具はなく、照明も白主体でシンプル。その分、演奏に集中できます。 ボーナスディスクとしてプロモビデオを20曲以上も収録したDVD「PLAY」がついています。 |
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パッション:最後の誘惑(1989年) Passion: the Last Temptation of Christ もともとマーティン・スコセッシ監督の映画「最後の誘惑」のサントラとして作った曲。やり残した感があり、映画公開後に手を加えて磨きをかけ、オリジナルアルバムとして仕上げました。 1983年から映画のプロジェクトが開始され、マーティンはピーターに「古典でもなく、モダンでもないサウンド。地域性、伝統、雰囲気が感じられ、生命感がある曲」を求めたそうです。 中東や北アフリカのリズムをベースに、世界各国のミュージシャンをゲストに招き、多様なエスニックな楽器を駆使した民族音楽的インストが収録されています。これまでのソロ作品とは全く異なり、ロックさは皆無です。民族音楽が好きな人以外はお勧めできません(しかし、一回はまるとクセになって何回も聴いてしまうことになる)。 |
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Us(1992年) Us これまでのピーターの集大成とも言える、怪し系、癒し系、ポップ系、ハード系など多彩なサウンドが収録されています。多様なエスニック楽器を組み込み、これまでになく分厚い音作りになっています。 かと言って、散漫な感じはせずアルバムとしてうまくまとまっています。 シネイド・オコナーとデュエットしたBlood of Edenの美しさは絶品。 |
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シークレット・ワールド・ライブ Secret World Live 1993年11月16〜17日のイタリア、モデナ公演を収録。 様々な大道具、小道具が使われたステージの演出だけではなく、トニー・レヴィンが使う様々なベースギターも見物です。一瞬たりとも、目が離せません。 選曲、演奏ともバッチリ。5.1ch音源収録で、音質も最高です。 |
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シークレット・ワールド・ライブ(1994年) Secret World Live 1993年11月16〜17日のイタリア、モデナ公演を収録。 So、Usの収録曲を中心に構成されたライブアルバム。選曲、音質、曲の流れといい非のつけようがない。 |
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OVO(2000年) OVO: Millennium show 2000年に365日間もロンドンのミレニアム・ドームで開かれたスーパーサーカスのサントラ盤。 舞台美術家・建築家のマーク・フィッシャーから声をかけられ、デザイン面はマーク、音楽面はピーターが担当することになりました。 ピーター自身が歌った曲は少なく、ゲストボーカルの方が多いです。 ゆったりとして落ちついた感じの曲が多く、派手さはありません。 |
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Long Walk Home(2002年) Long Walk Home: Music from the Rabbit-Proof Fence フィリップ・ノイス監督の映画「裸足の1500マイル」のサントラ盤として作られた作品。この映画は、白人男性と先住民アボリジニ女性の混血児を家族から隔離するという1931年にオーストラリアがやった政策を題材にしたもので、民族問題に関心が高いピーターが賛同して制作されました。 多様なエスニックな楽器を駆使した民族音楽的インストが収録されています。パッションに比べると、ほわーんとしたシンセの割合が多くて刺激性は少ないです。 |
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Up(2002年) Up Usに比べて音数がぐっと減り、しっとりとした曲が多いです。「静けさの中にキラリと黒光りする」といった感じです。もはや「仙人の域」に達しています。 落ち着いた感じの曲が多く、おもしろさには欠けますが、疲れた心を癒してくれる感じがします。 SACDには5.1ch音源が収録されており、立体的な音を楽しむことができます。 |
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グローイング・アップ・ライヴ Growing up live 2003年5月のミラノ公演を収録した作品。バッキング・ボーカルとしてピーターの娘メラニーが参加しています。これまでより演出が大掛かりとなっています。父娘そろって、上下さかさま宙吊になったり、球体の中に入ってそれごと跳ねたり、自転車に乗って歌ったりと「そこまでやるか!」の連発です。 UsやUpの収録曲が中心なので、初期のファンの人には物足りないかもしれませんが、とにかく楽しめます。 Blu-rayには「スティル・グローイング・アップ-ライヴ&アンラップト」のDVDがついてきいます。 |
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スティル・グローイング・アップ-ライヴ&アンラップト Still growing up & unwrapped 2004年のStill Growing Upヨーロッパツアーでの複数の公演を厳選して収録したもの。 大掛かりなセットではなく、小さめの会場で観客との心の触れ合いを求めたそうです。 Upからの曲はBurn You Up, Burn You Downのみで、定番曲が多く収録されています。ラストのBikoでの観客の大合唱は見もの。 |
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プレイ−ザ・ビデオ PLAY これまでに発表されたプロモーションビデオを集めたものです。23曲も収録されています。注目すべきは全曲5.1chでリミックスされているということ。前後左右から音の刺激を受けて、快感です。 ベスト盤的な選曲にもなっているので、ピーター入門として最適。 |
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スクラッチ・マイ・バック(2010年) Scratch My Back 他のミュージシャンと「お互いの曲を演奏しあおうぜ」という企画の第1段。ピーターがデビッド・ボウイやレディオヘッドなどの曲をカバーしたアルバム。 自身の創造力を高めるために「ノー・ドラム、ノー・ギター」という制約をつけ、自分の声とオーケストラとピアノだけで曲を奏でています。私は元歌を知らないので、ピーターの歌声が聴ける新曲気分になりました。 しんみりとして、ヒーリングには向きますが、面白みに欠けるので、「ピーターの信者はどうぞ」と言った感じ。 |
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ニュー・ブラッド(2011年) New Blood スクラッチ・マイ・バックでオーケストラ・アレンジで過去の名曲を歌う楽しさを知り、「ならば自分の曲でも」という感じで作った作品。 ヒット曲ではなく、オーケストラ・アレンジにあう曲を厳選して、原曲の雰囲気を維持しつつもさらに磨きがかかったものに仕上がっています。 私はこの手のアレンジ物は好きじゃなくて長年食わず嫌いしてきましたが、好奇心で聴いてみたら想像をはるかに超えてよかったので、愛聴状態になりました。 ピーターのボーカル抜きバージョンを収録したボーナスCDがついた2枚組セットもあります。 まずはオリジナルアルバムを聴きこんで、曲の魅力を知り尽くした後に聴いてみてください。 |
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ニュー・ブラッド〜ライヴ・イン・ロンドン New Blood Live in London 2011年3月23、24日にオーケストラをバックにしたロンドン公演を収録。ニュー・ブラッド収録曲に、スクラッチ・マイ・バックに収録された数曲をプラスした構成になっています。 メラニーが参加して、彼女のか細い声が曲に哀愁を加えています。 |
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ライヴ・ブラッド Live Blood 上記の音源のみを収録したもの。 |
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アンド・アイル・スクラッチ・ユアーズ(2013年) And I'll Scratch Yours スクラッチ・マイ・バックの姉妹版。 ピーターの名作をいろいろなアーティストがカバーしたものを収録。デヴィッド・バーン、ブライアン・イーノのようなひと癖ふた癖あるミュージシャンが独自のアプローチで曲を料理しています。 スクラッチ・マイ・バックと同年に発売予定だったのですが、相手側の曲の提供が遅れに遅れ、3年遅れの発売になりました。 詳しくは私のブログをご覧ください。 |
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Back to Front: Live in London 2013年10月21、22日に実施されたロンドン公演を収録。Soの発売25周年企画の一環で、当時のツアーメンバーが再集結してSoの完全再現を試みています。 序盤は白主体のシンプルなライティング。Come Talk to MeやShock the Monkeyをアコースティックアレンジで演奏するところには「いつもとは違うんだぜ」感が出ています。 そのままシンプルなライティングで行くのかと思いきや、So曲になったら色とりどりに一転し、Red Rainでバックスクリーンに表示されるメンバーの赤いシルエットの美しさには目を見張ります。女性ボーカルとして参加したジェニー・アブラハムソンがかわいらしさを感じる声で歌うDon't Give Upにはしびれます。単なる再現ではなく、魅力的にアレンジされた曲もあり。 インタビューなどを収めたDVD/Blu-rayとライブ音源のCDをセットにしたデラックス盤もあります。 |
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Rated PG(2019年) 「ベイブ/都会へ行く」(1998年)や「ウォーリー」(2008年)などの1984〜2017年の映画に用いられた曲を寄せ集めたもの。 ピーターは映画が大好きで、いい映画プロジェクトやいい監督作品についての映画音楽の話が来ると飛びつくようにしているそうです。 後半になるにつれ、エスニックさが増してきます。オーケストラバック、ゴスペルコーラスバックなど、いろいろなタイプの曲が入っていて、けっこう面白いです。 |
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Flotsam And Jetsam(2019年) シングルB面曲、リミックス曲、レア曲を集めたもの。 1976〜1985、1986〜1993、1994〜2016の3つのパートに分け、60曲以上も収録。 1曲目のStrawberry Fields Foreverはピーターがジェネシス脱退後初めて発表された曲で、1976年の映画「All This and World War II」のサントラ(他のミュージシャンによるビートルズのカバーもあり)に収録。 各曲についての詳細はピーターの公式サイトをご覧ください。 |
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i/o(2023年) i/o 異国情緒と哀愁漂う曲で幕開けし、続く曲は機械的&ダークな曲というコントラストはナイス。その後、しっとり曲とポップ目の曲がほぼ交互に登場しますが、いずれもインパクトに欠けます。昔のような刺激を求めるのではなく、気持ちを落ち付かせるためにじっくりと聴く分にはよいです。 チャッド・ブレイクとマーク・”スパイク"・ステントという2人の敏腕エンジニアを起用。どちらのミックスも甲乙つけがたく、チャッドの手によるダークサイド・ミックス、マークの手によるブライトサイド・ミックスをそれぞれ1枚のCDに収録。 Blu-rayには上記のハイレゾステレオとハンス-マーティン・バッフの手によるインサイド・ミックス(ドルビー・アトモス)を収録。 |
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